
「不眠症」を治療する方法として一番手っ取り早いのは、化学的な製法で作られた西洋薬を投与すること、思い切り簡単に言ってしまえば「睡眠薬を飲む」ことなのですが、このやり方は副作用が怖い上に習慣性の問題もあります。
同じ『薬」でも、漢方薬の場合は西洋薬のように直接的にではなく、「眠れない体質」の改善に重きを置いたやり方ということになります。
今回は『よい眠り」に効果のある漢方薬を中心にご紹介しましょう。
この漢方薬が効く!症状ごとにオススメをご紹介
先述の通り、漢方薬は『体質改善』、もう少し詳しく説明すると、「不眠症」の場合は「眠れない原因の除去」へとアプローチすることが、直接睡眠を誘導する物質を体に取り入れる睡眠薬とは異なります。
「不眠症」の症状は、大きく2種類に分けることができると思います。
なかなか寝付けない…いわゆる「入眠障害」。
深い眠りが続かない…「熟眠障害」「早期覚醒」「中途覚醒」が該当。
処方すべき薬は、症状によって当然異なります。
症状ごとに、オススメの薬を紹介していきましょう。
なかなか寝付けない場合にオススメの漢方薬
三黄瀉心湯…機能亢進を鎮める作用がある。イライラしている時にはリラックスが得られ、寝付きやすくなる。
黄連解毒湯…これも機能亢進を鎮める効果。体力があって、血圧が高めの人に向いている。
女神散…気の巡りをよくし、神経の不調を治す。気分がすぐれない時に効果的。
抑肝散…神経の高ぶりを抑える効果。精神・神経疾患の補助薬として多用される。
抑肝散加陳皮半夏…効果は抑肝散と同じ。イライラしている時に有効な処方。
酸棗仁湯…神経を鎮めて寝付きをよくする。体力があまりなく、繊細な人に向いている。
半夏厚朴湯…これも神経を鎮める作用。疲れやすく、繊細な人に向く処方。
柴胡加竜骨牡蛎湯…神経の高ぶりを鎮める。体力が比較的ある人に向いている。
深い眠りが続かない場合にオススメの漢方薬
加味逍遙散…血液の循環をよくする。イライラにも効果あり。虚弱な人や女性に向く。
八味地黄丸…体の弱った機能を補う。高齢の人に処方されることが多い。
加味帰脾湯…不安、緊張、イライラ感を鎮める。体が弱く、繊細な人向き。
漢方薬だって「薬」。副作用には気をつけて
ここで気をつけないといけないのは、
漢方薬も「薬」なので、「副作用」がちゃんとある
ということです。
漢方薬の副作用は、大きく3つあります。
誤治…「証」に合わない薬を服用した時に起こる副作用。
真の副作用…生薬の薬理作用による副作用、またはアレルギー反応。
暝眩…一時的に副作用が現れるものの、その後好転。
「証」については説明が必要なのですると、生まれ持ったものも含めた患者のその時点での状態のことを指します。
体力のある人は「実証」、虚弱体質の人は「虚証」と呼ばれます。
「証」が違えば、処方すべき薬も変わってきます。
続いて、漢方薬の副作用はどう回避すればよいかをあげていきます。
「証」に合った薬を飲む…誤治を防ぐために必要。
漫然と同じ薬を長期服用しない…特に西洋薬より早く効く薬、数分で効く薬といった、即効性のある薬に対しては重要。
併用に注意する…同じ生薬が重なっている薬は併用してはいけない。特に甘草の重なりは危険。
副作用を知っておく…知っておけば、副作用が出た時に服用をストップできる。
ちなみに、西洋薬との併用は問題ありません。
最後に
気をつけなければならないことはいろいろありますが、漢方薬は睡眠改善には大きな効果をもたらしてくれるものの一つですので、選択肢に加えたいところですね。
くれぐれも使用法と用量は正しく守って、良い眠りをもたらすための「ツール」として使っていきましょう。