
寝つきの悪さや快眠を妨げる原因にはさまざまなものがありますが、「寝る前のたばこ」もその一つ。
寝る前に一服…という習慣がしっかり定着している人は、なかなか寝つけなかったり睡眠が浅いように感じたりなど思い当たることはありませんか?
たばこは吸った直後こそリラックス効果がありますが、それを感じられるのはその一瞬だけ。あとは一転して睡眠を妨害する覚醒効果が続いてしまうのです。
では、寝る前のたばこが快眠を妨げてしまう原因とはなにか、睡眠に及ぼす悪影響を詳しく見ていきましょう。
目次
たばこのニコチンが寝つきを悪くする
喫煙者の中には「気持ちが落ちつくから」「リラックスできるから」と、寝る前に一服するのを習慣にしている人が多いといわれています。
ですが、たばこを吸っている人で寝つきの悪さや不眠を訴える人は、吸わない人より圧倒的に多いといわれているのをご存知でしょうか。
寝酒や寝る前にカフェインの入った飲み物を摂るなどの習慣が、睡眠によい影響を与えないのはよく知られているようです。
そして、寝る前にたばこを吸うことも快眠を妨害することになります。その大きな原因となっているのは、たばこに含まれているニコチン。
ニコチンにもカフェインと同じように、寝つきの悪さを引き起こすなど睡眠の質を下げてしまう作用があるのです。
ニコチンを摂取すると得られる「リラックス効果」
ニコチンが眠りの質を下げる大きな原因になる、その理由はどんなことなのでしょうか。
たばこの中に含まれているニコチンには、大きく2つの効果があります。
1つは、リラックス効果。
喫煙者がたばこを吸うと気分がスッキリするように感じるのは、ニコチンの鎮静作用によるものです。
そのため、「たばこを吸うとリラックスできる・落ちつく」というのは気のせいではなく、ニコチンの働きによってリラックス状態が得られるのです。
また、たばこを吸う習慣のある人はニコチンが切れるとイライラしたり、そわそわと落ちつきがなくなったりします。そんな場合にたばこを吸うと落ちつきを取り戻しますが、この状態をたばこで得られるリラックス効果と錯覚している人も少なくないようです。
実はこれは立派なニコチン依存の症状。禁断症状ともいわれますが、喫煙者がたばこをやめると睡眠中にもその症状が現れるといいます。日中に強い眠気に襲われ、夜は逆に目が冴えやすくなるのです。
喫煙でのニコチン摂取で得られるのは「覚醒効果」も
そして、2つめは覚醒効果。
こちらはリラックス効果よりも強く現れる傾向にあり、一時的に頭をすっきりさせる効果があります。
ニコチンには脳内を覚醒させる作用をもつアドレナリンの分泌を促す働きがあります。「たばこを吸うと目が覚める」という感覚は、この覚醒作用によるものなのです。
なお、この覚醒効果はわずか数秒で得られるので、約30分かかるカフェインの覚醒効果とは比較にならない即効性があります。さらにその効果はカフェインよりも強力といわれているのです。
先述のとおり、寝つきの悪さなどを訴える喫煙者の割合は、たばこを吸わない人のおよそ5倍にも上るといわれています。
さらにたばこを吸う人は眠りも浅いことがわかっているので、喫煙が快眠にはほど多い習慣であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
ニコチンの影響について
次に、ニコチンが人体に与える影響を見ていきましょう。
ニコチンは人の体内に入ると中枢神経や末梢神経・筋肉などに広く作用します。喫煙で得られるニコチンの覚醒効果が脳を興奮状態にし全身の血管を縮ませるので、血圧が上がったり脈拍が速くなったりなどの影響を受けることになります。
また、体内のニコチンが分解されて半減されるまでには30分~2時間ほどかかるといわれています。そのため、寝る前にたばこを吸うとニコチンの覚醒効果が残っているので、寝つきの悪さをもたらし寝ている間に目が覚めやすくなるなどの悪影響となるのです。
寝る前にたばこを吸うならせめて2時間前までに
「たばこは快眠を遠ざけるから禁煙が理想的」、と言葉でいうのは簡単です。
頭では禁煙がベストとわかっていても、なかなかやめられないのが現実でしょう。
段階を踏んでストレスを減らしながら禁煙を目指す、というのであればせめて寝る前の2時間はたばこを吸わないという方法がおすすめです。
先ほども書いたように、たばこに含まれるニコチンの量が半減するのは2時間ほどかかります。
そのため、就寝前の2時間たばこを断てば、脳が覚醒して寝つきが悪くなるのを避けられるかもしれません。
そして、徐々に寝る前にたばこを断つ時間を増やしていき、最終的に禁煙を目指していくとよいのではないでしょうか。