
人の体温は1日の間に一定のリズムを保って変動しています。
昼間の活動中に体温は高くなり、夜の睡眠中には低くなるという変動リズムを持っているため、それに身体の活動リズムを合わせることで理にかなった生活が送れるのです。
また、昼と夜の体温差が大きいほど寝つきがよくなり快眠につながるともいわれています。
そこで、睡眠と体温の関係について詳しく見ていきましょう。
目次
人は体温が下がると眠くなる
夜になると人が眠気を催すのは、身体の内部の深部体温が下がるためです。
夜には自然と深部体温が下がり始めますが、体内の熱を下げるため身体の内部から表面に熱が送り出されるので身体の表面温度は上がります。そのため、眠くなると体温が上がったと感じる人も多いといいます。
夜間に人の体温が下がって眠くなるのは、副交感神経が優位になりリラックス状態になるからです。
副交感神経が働き出すと血管が拡がり血圧も下がって、ゆっくりとした心拍になり体温が下がるのですが、これは「身の安全を確保できた」と脳が認識するためといわれています。
体温の変動する差が大きいと睡眠の質が上がる
よく眠れるための条件は、1日のうちに起こる体温の変動の差を大きくすることといわれています。つまり、「最高体温」と「最低体温」の差を広げると睡眠の質が上がるというわけです。
そこで意識的に体温の差をコントロールする方法には、運動・入浴・食事があります。
どれも簡単にできる方法なので、眠りを深くしたい場合には意識しておこなうと効果的です。
運動は睡眠の質を高めるのに有効
中でも運動は体温を上げるのと同時に身体を程よい疲れをもたらすので、睡眠の質を高める方法として最適です。
昼間のうちか、眠りにつく4時間前までに軽く汗ばむくらいの運動を習慣にするとよいでしょう。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動や、とくに準備の要らないラジオ体操などもおすすめです。
なお、寝る直前の筋トレやサイクリングなどの激しい運動は身体への負荷も大きく交感神経を刺激し脳を興奮させてしまうので、避けたほうが無難といえます。
体温に変化の幅をつける入浴のポイント
身体を内部から温め体温を上げるための入浴は、シャワーだけでは得られません。必ず湯船に浸かるように心がけましょう。
お湯の温度は38~40℃くらいのぬるめの湯船に、20分ほどゆっくり浸かると効果的です。副交感神経が刺激されてリラックス状態を呼び起こすので、お風呂を上がったあとに寝つきがよくなります。
なお、お風呂は就寝の1時間前までに済ませておきましょう。深部体温が自然と下がって眠気を催すには、30分から1時間ほどの時間がかかるためです。
寝る直前にお風呂に入ると深部体温が下がりきらないので寝つきが悪くなったり、浅い眠りになったりするので気をつけましょう。
食事にも体温を上げる効果が
食べものは胃腸などの消化器官に摂りこまれると、消化・吸収の過程で熱エネルギーを発します。そのため、食事でも体温を上げることができるのです。
ですが、寝る直前の食事は胃腸が消化のために働いているので寝つきを邪魔したり消化不良の原因となったりします。
体調を崩す原因や肥満の原因にもなる可能性があるので、食事は寝る3時間前ほどに済ませておくのが理想的です。
体温が原因で睡眠が邪魔されることも
最高・最低体温の温度差が小さいと寝つきの悪さにつながることもあります。
温度差が大きくならない原因に考えられるのは、運動不足や筋肉量の減少・加齢などの影響があります。
運動不足になると昼間の活動量が足りないため体温が上がりません。また、筋肉は熱エネルギーを生み出しているのでその量が少ないと体温の上昇する幅が伸びないわけです。
なお、不規則な生活習慣が原因となって自律神経のバランスが乱れ、体温が変動するリズムに影響を与える場合もあります。
たとえば自律神経失調症の人は、夜になっても深部体温が高いままで下がらないこともあり、睡眠に悪影響が及びやすくなるのです。
その他、女性は月経の周期による女性ホルモンの分泌量の変化に影響されて、夜になっても体温が下がりにくくなる場合もあります。
以上、体温と睡眠の関係について見てきました。
体温の変動する差を大きくすることが、スムーズな入眠を助けて快眠につながる条件ともいえるようですね。体温を上げる方法はどれも日常で実践しやすいものなので、意識しておこなってみてはいかがでしょうか。